いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす

い いにしえの道(みち)を聞いても唱(とな)えても わが行(おこな)ひに せずばかひなし
⇒昔の偉い人たちの教えを いくら聞いても、自分の口で復唱しても、それらの教えを行動に移さなければ なにもならない。
ろ 楼(ろ)の上もはにふの小屋も住む人の 心(こころ)にこそは 高きいやしき
⇒立派な豪邸に住んでいても みすぼらしいわらぶき屋根の家にすんでいようとも 人間の価値には関係ない。 心のあり方によってこそ その人の価値が決まる。
は はかなくも明日(あす)の命をたのむかな 今日も今日もと 学(まな)びをばせで
⇒今日できることを明日に延ばし さらに明後日に延ばす。 明日という日を頼りにすると結局は 何も出来ない。 今という時を大事にして 今日出来る事は かならず今日しなさい。
に 似(に)たるこそ友としよけれ 交(まじ)わらば われにます人(ひと) おとなしき人
⇒自分と同等のレベルの人と友達になろうとするものであるが それでは進歩がのぞめない。 自分より才能や学問などの 自分よりすぐれた見識を持つ人間とつきあって 自分をより高めなさい。
ほ 仏(ほとけ)神他にましまさず人よりも 心(こころ)に恥(は)ぢよ 天地よく知る
⇒神仏は自分の心の中に住んでいる。 自分の良心に恥じることなく正しい生活行動をしなさい。 誰が見てなくても 天地は見ている。 天地をごまかすことはできない。
へ 下手(へた)ぞとて我をゆるすな稽古だに つもらばちりも 山とことの葉(は)
⇒いくら下手でも稽古をおろそかにするものではない。 稽古をつめばつむほど少しづつ進歩して いつかは上手くなるものだ。 「ちりが積もれば 山となる」の言葉とおりである。
と 科(とが)ありて人を斬るとも軽くすな いかす刀(かたな)も ただ一つなり
⇒いくら罪人であっても 軽々しく処罰してはならない。 慎重に考え、殺 すことより生かすことの難しさをよく考えなさい。
ち 知恵(ちえ)能は身につきぬれど荷にならず 人(ひと)は おもんじはづるものなり
⇒知恵や能力はいくら身につけても、決して邪魔にならない。多くの能力を身に付けた人を世間の人は尊敬し自分の無知を恥ずかしがるものであるから 多くのことを学び知恵や能力を身につけ たゆまなく自分を磨きなさい。
り 理(り)も法も立たぬ世ぞとてひきやすき 心の駒(こま)の 行くにまかすな
⇒乱れた世の中であっても 決して自分勝手なふるまいに走ってはならない。 たとえ世が乱れていても どのような変化があろうとも自分の行動は正しくまっすぐ進むようにしなくてはならない。
ぬ ぬす人はよそより入ると思ふかや 耳目(みみめ)の門(かど)に 戸ざしよくせよ
⇒悪は外から入ってくるものと思われているが 本当の悪は自分の中にいるものである。 人の言葉にまどわされたり まわりの変化に自分を見失ったりすることがないように 心の戸締りを日頃からこころがけなさい。
る 流通(るずう)すと貴人や君が物語り はじめて聞ける 顔もちぞよき
⇒よく知っていることでも 上司や目上の人の話ははじめて聞くような態度をとりなさい。 いくら知っているからといって おうちゃくな態度はとってはいけない。
を 小車(をぐるま)のわが悪業(あくごう)にひかれてや つとむる道(みち)を うしと見るらん
ついつい欲望や情欲に引かれてしまうのが人間である。 仕事などがつらくなってきて 仕事などをさぼってしまい 悪行にはしってしまう。 常に自分の心の道を 感謝の心でつとめていきなさい。
わ 私を捨(す)てて君にし向はねば うらみも起こり 述懐(しゅつかい)もあり
君主(お客さん、会社)に仕えるためには 私心をすてなければいけない。 私心があるから不平不満をついつい言ってしまう。 私利私欲にとらわれずに 無の心で仕えることが 自分を伸ばす。
か 学問(がくもん)はあしたの潮のひるまにも なみのよるこそ なほ静(しず)かなれ
⇒朝でも昼でも学びの時間を選ぶ必要はない。 だが できれば夜 万物が眠る夜のしずけさほど 勉強にてきした時はないだろう
よ 善(よ)きあしき人の上にて身を磨け 友(とも)はかがみとなる
⇒善いことはすぐに見習い、悪いことはすぐに反省し、自分自身を磨きなさい。 また友達の行いは自分の反面教師となるので 自分の修行の手本にしなさい。
た 種(たね)となる心の水にまかせずば 道(みち)より外に 名も流れまじ
⇒欲望の心は捨てて 良心に従って行動すると道もはずさない 正しい道を歩きなさい。 いかなる時でも 心が迷いつらうことのないように 常日頃から心して修行しなさい。
れ 礼(れい)するは人にするかは人をまたさぐるは人(ひと)を さぐるものかは
⇒他人に礼を尽くすことは 決して他人のためばかりではない。 同じように他人を見下げるということは 自分を見下げるということになる。 けんきょさと礼儀正しさを失うことがないようにせよ。 少しばかりの才能を鼻にかけて 人前で威張るようなことはつつしみなさい。
そ そしるにもふたつあるべし大方(おおかた)は 主人のためになるものと 知(し)れ
⇒主人(上司、社長)の悪口には二通りあって 本当に主人(上司、社長)のことを思って心から言っているものと 自分の私利私欲からのうっぷんを言っているものとあるが いずれにしても主人(上司、社長)の為になることであるから 主人(上司、社長)はかんだいな心で受けとめて 反省するべきである。
つ つらしとて恨(うら)みかへすな我れ人に 報(むく)ひて はてしなき世ぞ
⇒人からつらい事をされても けっして報復をしてはならない。 人間はみんな弱いものだ。 許す心が大切である。 たえてこそ花咲く時もある
ね ねがはずは隔(へだて)てもあらじいつわりの 世にまことある 伊勢の神垣(かみがき)
⇒世の中がどのように変化しようとも 真心をもって自分の本分を尽くしなさい。 神様はかならず公平に我々を取り扱ってくださる。 天(神)に恥じることなく、常に自分をみつめよ。
な 名(な)を今に残しおきける人も人 心(こころ)も心 何かおとらん
⇒後世まで名前を残した立派な人であっても 我々と違いはない。 自分も努力すれば必ず名を残した人のようになれる。 自分にあったふさわしい道を選んで 努力をしなさい。
ら 楽(らく)も苦も時過ぎれば跡もなし 世に残る名を ただ思(おも)うべし
⇒楽も苦も永遠に続くものではなく 一時がすぎると跡形も無く消え去る 楽におぼれず困難をたえ 世の為に身を粉にしてつくして 後世に名が残る人間になれるくらいつとめあげよ。
む 昔(むかし)より道ならずしておごる身の 天(正道な心)のせめにし あはざるはなし
⇒昔から道に外れて おごり高ぶった人で天罰がくだらなかった人はいない。 地道ながらも 正道をつらぬき 天(正道な心)を敬い教えを守ってまじめに正しく生きなさい。
う 憂(う)かりける今の身こをは光の世と おもへばいまぞ 後(のち)の世ならん
⇒仏教の因果(いんが)を説いたもの。 今の世の苦楽のすべては 前世の生き様に関係している。 すなわち今の世を精いっぱい 正しく生きることによって 来世も希望に満ちた素晴らしい人生がおくることができる。
ゐ 亥(い)「午後10時」にふして寅「午前4時」には起くとゆふ露(つゆ)の 身(み)を 徒(いたずら)に あらせじがため
⇒夜は10時に寝て朝は4時に起きなさい。 露のごとくはかない人生を無駄にせず大事に生きなさい。
の のがるまじ 所(ところ)をかねて思ひきれ 時に至(いた)りて 涼しかるべし
⇒とても逃れることが出来ないと思うときは思いきって決断することである。 常日ごろからそういう覚悟を決めておけば もしという万が一の場合においても 覚悟ができ心も清らかである。
お 思ほへず違(たご)ふものなり身の上の 欲(よく)をはなれて 儀を守れひと
⇒人道にはずれてまでも 欲にひかれるようなことがあってはならない。 自分の私利私欲を捨てて正義をもって 世の中の道をまもるのが大事である。
く 苦(くる)しくとすぐ道を行け九曲折(つづらおり)の 末は鞍馬(くらま)の さかさまの世ぞ
⇒どんなに苦しいことに出会っても 正しい道を進みなさい。 曲がった道を進めば末は必ず自分のみ身をほろぼし ひどい仕打ちを受ける事になる
や やはらぐと怒(おこ)るをいはば弓と筆 鳥(とり)に ふたつのつばさとを知れ
⇒上にたつものはあまり優しくては部下になめられる。 しかしきびし過ぎても陰口をたたかれる いわば弓(武のきびしさ)と筆(文の理論)、つまり文武のようである。 これは鳥が二つの翼(つばさ)を持つように 鳥が空を飛ぶためには 両方の翼がなければならない。 やさしさと厳しさの二面をうま使い分ける人が 人を動かす。
ま 万能(まんのう)も一心とあり事(つか)ふるに 身(み)ばし頼(たの)むな 思案堪忍(しあんかんにん)
⇒どんなに才能がある人でも その人の心自体が正しくないと 何の約にもたたない。 人につかえる時はいくらすぐれた才能を持っていようとも おごる事無く 常に態度や礼儀を思案して慎重にふるまいつかえなさい。
け 賢不肖(けんふしょう)もちひ捨つるといふ人も 必ずならば殊勝(しゅしょう)なるべし
⇒賢い人をつかい そうでない人を捨てるということはなかなか難しいことである。 人の上にたつ者は 人柄や才能をできるだけ公平に見れる目をやしない 事にあたるべきである。
ぶ 無勢(ぶぜい)とて敵を悔(あなど)ることなかれ 多勢(たぜい)をみても 恐(おそ)るべからず
⇒少人数だからといって敵をあなどるな。 しかし大人数だといって敵を恐れるな。 常に自分達を見失わず よく自分達を理解して 力を一つにすれば いくら大敵(たいてき)だろうが うちやぶることができる。
こ 心こそ軍(いくさ)する身の命なれ そろふれば 生(いき)き揃(そろ)はねば死す
⇒軍隊が一致団結すれば 戦に勝つことができるが そうでなければ負けるだろう。 企業も同じで 規模の大小関係なく こころを一つにすれば企業は成長する。
え 回向(えこう)には我と人とを隔(へだ)つなよ 看経(かんきん)はよし してもせずとも
⇒たとえ戦場で敵味方に分かれて戦った相手であっても 死んだ人には 敵味方を区別せずに たとえお経を読まなくても 読んでも その人の冥福を祈りなさい。 その心が自他共にあなたちを救ってくれる。
て 敵となる人こそは己(おのれ)が師匠ぞと 思ひかへして 身をも嗜(たしな)め
⇒なかなか自分と気が合わない人や 敵だと思っている人には 近づきくないものだが 考えようによってはそういう人こそ師匠のように 自分をさとしてくれると心しなさい。
あ ききらけき目も呉竹(くれたけ)のこの世より 迷はばいかに 後(のち)のやみぢは
⇒この世の罪は来世までも影響をおよぼすものである。 目先欲にとらわれず 常に先を見すえて わが道を正すべきである。
さ 酒(さけ)も水ながれも酒となるぞかし ただ情(なさけ)あれ 君が言(こと)の葉
⇒将「上に立つ者」たる者は 深い情けで部下にあたるようにいつもこころがけなければならない。 そうすることによって部下は大いに士気を高めるものである。 厳しさのなかに相手を思う気持ちが 人の心にしみるものである。
き 聞くことも又見ることもこころがら みな迷(まよ)ひなり みなさとりなり
⇒同じような事でも受け取る側の心がけでどのようにでも変わるものである。 我(が)を控えて 何ごとも謙虚(けんきょ)に受けとることで人はさらに成長する。
ゆ 弓(ゆみ)を得て失ふことも大将の 心ひとつの 手をばはなれず
⇒大将「上に立つ者」の心ひとつで 軍「社員」の士気が上がったり 反対に士気が下がったりするものだある。 よく部下の心をとらえて士気が下がらないようにするべきである。 全ては上に立つ者の采配(さいはい)で状況が決まる。
め めぐりては我(わ)が身にこそは事(つか)へけれ 先祖のまつり 忠孝(ちゅうこう)の道
⇒よく先祖を供養(くよう)れば 自分の子孫もよく供養(くよう)してくれる。先祖の供養(くよう)の祭りを大切にして 親に対しては親孝行の道をつくせばやがて我がみにかえってくる。
世の中は回りまわるもの そういうものである。
み 道(みち)にただ身をば捨てんと思ひとれ 必(かなら)ず天の 助けあるべし
⇒正義のためには 命を捨てる覚悟で事にあたれば 必ず天の助けがある。 何ごとにも命がけで一生懸命事にあたりなさい。 それが幸せをよぶ。
し 舌(した)にも歯のこはきをばしるものを 人は心の なからましやは
⇒舌でさえ歯のかたいことをよく知っていて歯からは噛まれるようなことはない。 まして人は心をもっている。 人間のかかわりも心が中心で 決して外面的なものではない。 それゆえに相手の立場を考えて相手の心を害さぬように心がけるべきである。
ゑ 酔(え)へる世をさましもやらで 盃(さかずき)に無明(むみょう)の酒を かさぬるはうし
⇒酒びたりになっても 思い通りにならない世の中はどうにもならない。 そういうときこそ 自分を静かに見つめてみなさい。
ひ ひとり身をあはれとおもへ物(もの)ごとに 民(たみ)にはゆるす 心あるべし
⇒たよる者のない一人身はさびしいものである。 そのことをわきまえ たよる者がない孤児、老人、未亡人にたいしては 情けをかけて より一層いたわれ。 上にたつものは特に そのように心がけよ。
も もろもろの国(くに)やところの政道(せいどう)は 人にまづよく 教えならはせ
⇒いろいろな国や場所の法律「決まりごと又は、コンプライアンス」を 人民「社員、又は部下」によくよく教えておかなければならない。 じゅうぶんにその事を分かっていない人民「社員、又は部下」を 法「決まりごと又は、コンプライアンス」を破ったからといって 簡単に罰することはつつしめ まず人民「社員、又は部下」に よく教えてさとすことから始まる。 それから判断をくだしなさい。
せ 善(ぜん)に移(うつ)りあやまれるをば 改(あらた)めよ 義不義(ぎふぎ)は生まれ つかぬものなり
⇒人間のよしわるしは生まれついてのものではない。 どんな悪人でも よく教えてみちびいてやれば 善人に生まれ変われるものである。 寛容(かんよう)な忍耐(にんたい)をもって そのような人間を善人として導けれるように まわりの人々が努めなければならない。
す 少しきを足(た)れりとも知れ満ちぬれば 月もほどなき 十六夜(いざよい)の空
⇒何ごとにも欲を出すことなく ほどほどで満足することが大切である。 月も十五夜に満月になったとしても 十六夜の翌日にはかけ始める。 欲を深くすることなく 何よりも足ることを知って満足しなさい。 そうすれば人をねたむこともなくなる。 「我唯足知」

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